特定支出控除とは
給与所得者が次の①から⑤の特定支出をした場合、その年中の特定支出の額の合計額が給与所得控除額を超えるときは、
確定申告によりその超える金額を給与所得控除後の金額から差し引くことができる制度があります。
これを給与所得者の特定支出控除といいます。
この特定支出とは、給与所得者が支出する次に掲げる支出のうち一定のものです。
① 一般の通勤者として通常必要であると認められる通勤のための支出
② 転勤に伴う転居のために通常必要であると認められる支出
③ 職務に直接必要な技術や知識を得ることを目的として研修を受けるための支出
④ 職務に直接必要な資格(弁護士、税理士等の一定の資格を除きます。)を取得するための支出
⑤ 単身赴任などの場合で、その者の勤務地又は居所と自宅の間の旅行のために通常必要な支出
なお、これらの五つの特定支出は、いずれも給与の支払者が証明したものに限られます。
また、給与の支払者から補填される部分があり、かつ、その補填される部分に所得税が課税されていないときは、その補填される部分は特定支出から除かれます。
この特定支出控除を受けるためには、確定申告を行う必要があります。
その際、特定支出に関する明細書及び、給与の支払者の証明書を申告書に添付するとともに、搭乗・乗車・乗船に関する証明書や支出した金額を証する書類を申告書に添付又は申告書を提出する際に提示してください。
平成24年度税制改正
この制度は、1987年(昭和62年)に創設されたものですが、利用する方が非常に少なく、例年10名前後程度の方しか利用されていない制度です。
平成24年度税制改正では、特定支出控除を使いやすくする観点から、特定支出の範囲が拡大され、特定支出控除の適用判定の基準が見直されます。
なお、所得税は平成25年分から、住民税は26年度から適用が開始されます。
特定支出の範囲が拡大
特定支出の範囲に次に掲げる支出が追加されます。
<資格修得費>
職務の遂行に直接必要なものとして給与等の支払者により証明がされた、弁護士、公認会計士、税理士などの資格取得費
<勤務必要経費>
次に掲げる支出(その支出の額の合計額が65万円を超える場合には、65万円までの支出に限ります)で、その支出がその者の職務の遂行に直接必要なものとして給与等の支払者より証明がされたもの
イ 書籍、定期刊行物その他の図書で職務に関連するもの及び制服、事務服、作業服その他の勤務場所において着用することが必要とされる衣服を購入するために費用
ロ 交際費、接待費その他の費用で、給与等の支払者の得意先、仕入先その他職務上関係のある者に対する接待、供応、贈答その他これらに類する行為のための支出
区分 | 現行の特定支出控除 | 改正後 |
---|---|---|
資格取得費 | 弁護士・公認会計士・税理士・弁理士などの一定の資格は適用除外 | 職務の遂行に必要な弁護士・公認会計士・税理士・弁理士などの資格取得費を追加 |
勤務必要経費 | 適用なし | 職務と関係のある図書の購入費、職場で着用する衣服の衣服費、職務に通常必要な交通費を追加(65万円を限度) |
特定支出控除の適用判定・計算方法の見直し
その年の特定支出の額の合計額が、次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に定める金額を超える場合(現行:給与所得控除額を超える場合)は、その超える部分の金額を給与所得控除額に加算することができることとします。- 給与等の収入金額が1,500万円以下の場合
→ その年中の給与所得控除額の2分の1に相当する金額
- 給与等の収入金額が1,500万円を超える場合
→ 125万円
給与等の収入金額 | 現行の特定支出控除 | 改正後 |
---|---|---|
1,500万円以下 | 特定支出の額の合計額が給与所得控除額を超える場合、その超える部分の金額を、所得控除に加算することができる | 特定支出の額の合計額が給与所得控除額の2分の1相当額を超える場合、その超える部分の金額を、所得控除に加算することができる |
1,500万円超 | 同上 | 特定支出の額の合計額が125万円を超える場合、その超える部分の金額を、所得控除に加算することができる |