再婚後の相続
『再婚したが、再婚相手に連れ子がいる場合、相続はどうなるか』といった内容の相談が増えてきました。
男女が婚姻した場合、双方は配偶者となり、相互に相続人となる等の効力が発生します(民法890条)。
しかし、婚姻によって、一方の連れ子とその親の再婚相手との間に親子関係が発生するわけではありません。 たとえ妻の連れ子が妻の再婚相手を「お父さん」と呼んでいたとしても、法律上は親子としては扱われません。
したがって、婚姻の手続のみでは、妻の連れ子は、母親の再婚相手の相続人とはなりません。
<相続関係例>
■ 夫、妻(前夫との子Bあり)、夫と妻との子A の場合
死亡者 | 相続者(配偶者) | 割合 | 相続者(子) | 割合 |
---|---|---|---|---|
夫 | 妻 | 1/2 | 子A | 1/2 |
妻 | 夫 | 1/2 | 子A 子B |
1/4 1/4 |
● 夫が死亡した場合、配偶者に1/2、子Aに1/2の相続が発生します。夫と子Bには親子関係がないため相続は発生しません。
● 妻が死亡した場合、配偶者に1/2、子A・子Bに1/4の相続が発生します。妻の子は、前夫の子Bと後夫の子Aとで平等に相続します。
法定相続人、法定相続分についてはこちらを参照してください。 → 法定相続人・法定相続分
養子縁組
では、連れ子にも相続させるにはどうしたらよいでしょうか。
それは、養子縁組をすることです。
養子縁組により養子となり、夫と再婚相手の子との間に法律的にも親子関係ができ、実子と同等の権利を持つようになります(民法809条)。
なお、養子と実子とで、法定相続分に違いはありません。
<相続関係例>
■ 夫、妻(前夫との子Bあり。ただし、夫と子Bは養子縁組あり)、夫と妻との子A の場合
死亡者 | 相続者(配偶者) | 割合 | 相続者(子) | 割合 |
---|---|---|---|---|
夫 | 妻 | 1/2 | 子A 子B |
1/4 1/4 |
妻 | 夫 | 1/2 | 子A 子B |
1/4 1/4 |
● 夫が死亡した場合、配偶者に1/2、子A・子Bに1/4の相続が発生します。養子縁組により子Bも夫の子となり、子Aと同等の権利を持ちます。
● 妻が死亡した場合、配偶者に1/2、子A・子Bに1/4の相続が発生します。
相続時に揉めない為に
相続時において、法定相続人に法定相続分が相続されますが、具体的な財産をどのように分けるかは、遺産分割協議により決定します。
遺産分割協議書には法定相続人全員の署名捺印が必要ですが、法定相続人には離婚した相手との子も含まれます。離婚しても親子関係は続きます。
例えば、再婚時には成人であったため別居していた相手の子が、遺産分割協議で揉めることも少なくありません。
遺産分割協議で揉めない為には、遺言書を作成することをお勧めします。
<相続関係例>
■ 夫(前妻との子Cあり。子Cは成人しており別居。なお後妻と子Cは養子縁組なし)、妻(前夫との子Bあり。ただし、夫と子Bは養子縁組あり)、夫と妻との子A の場合
死亡者 | 相続者(配偶者) | 割合 | 相続者(子) | 割合 |
---|---|---|---|---|
夫 | 妻 | 1/2 | 子A 子B 子C |
1/6 1/6 1/6 |
妻 | 夫 | 1/2 | 子A 子B |
1/4 1/4 |
● 夫が死亡した場合、配偶者に1/2、子A・子B・子Cに1/6の相続が発生します。養子縁組により子Bも夫の子となり、子A・子Cと同等の権利を持ちます。
● 妻が死亡した場合、配偶者に1/2、子A・子Bに1/4の相続が発生します。妻と子Cには親子関係がないため相続は発生しません。